学校の授業を受ける上では、
黒板に書かれた内容をノートに書き写す作業、
いわゆる「ノートをとる」ことが大切になってきます。
特に中学生になってからは、板書された内容をしっかり
ノートに取れるか取れないかによっても、
成績に影響が大きく出てくるとも言われています。
そこで今回は、学習に苦手を感じる要因の一つ
「書く」ことについてお話ししたいと思います。
自分たちの経験として、
授業の中で当たり前に行なわれている
「ノートをとる」という作業。
ただ書いてある内容をノートに書き写すだけの、
口で言えば単純にさえ感じられる作業ですが、
この「ノートをとる」という作業は、
目で見た情報を形として取り込み、
再度頭の中で文字にし、
その文字を手を使ってアウトプット
しなければなりません。
意外と複雑かつ多くの処理を同時に行なう、
この「書く」という作業が苦手な子どもたちは、
実は数多く隠れています。
このような子どもたちは、学習の大きな部分を占める
「書く」という作業が苦痛になっている場合があります。
なんとか授業についていこうと、一生懸命ノートをとろうとしても、
授業のスピードについていけず
周囲からどんどん遅れてしまい、
結果として自信を失っていき、学習そのものが嫌いになる
というケースも少なくありません。
板書された内容、つまり目から取り入れた情報を
文字にして書くという作業が苦手な理由には、
以下のようなものが考えられます。
・複数の作業を同時に進行するのが苦手
(先生の話を聞く・黒板を見る・黒板をノートに写す)
・黒板を見たり手元のノートを見たりと視線の往復が苦手
・対象の物に焦点を合わせるのに時間がかかる
(板書の字・手元のノート)
・集中力が続かない
(ほかに興味が行ってしまう、興味のないことは集中できない)
・短期記憶が苦手
(何度も黒板を見返さなければノートに写すことができない)
・文字を読むことに困難を抱えている
(ディスレクシアなど)
基本的に、集団を相手にしながら行う学校の授業では、
書くこと・ノートをとることが苦手な生徒にスピードを
合わせてしまうと、どうしても
授業全体のスピードがゆっくりになってしまうため、
そうした子どもたちに対して、
思うように配慮がなされない事も少なくありません。
脱ゆとり教育の波から、
これまで以上に授業内容と書く量も増えてきており、
授業のスピードは加速する一方です。
書くことに困難を感じている児童・生徒を対象に、
カメラやタブレット等を利用して、
板書内容を撮影し後でノートに写し取る
という方法を取り入れているケースもありますが、
中には「その生徒だけを特別扱はできない」
という理由から、なかなかそれを実施できている学校は少ない
ようです。書く・ノートをとることの苦手な子どもは、
この「書く」作業によって、
学習に対しネガティブな感情を抱いていたり、
その他の手段があれば授業についていけるはずなのに、
それができず困っていたりするのです。
すべての子どもたちが、それぞれの持つ可能性を最大限に引き出すためにも、
できるだけ多くの支援や配慮が柔軟になされるべきではないか
と思います。そのためには、
一人ひとりの子どもの得意や苦手を理解し、
有効な支援が適切に行われる環境が必要
なのではないでしょうか。
以上、学習に苦手を感じる要因の一つ「書く」ことについてお話ししました。
イラスト:ニョラネコ